『求人詐欺 内定後の落とし穴(今野 晴貴)』書評

求人詐欺

なぜブラック企業に入社してしまう人がいるのか?

なぜブラック企業を辞められない人がいるのか?

なぜブラック企業が存在するのか?

ブラック企業対策のNPOの代表である今野 晴貴氏の『求人詐欺 内定後の落とし穴』は、ブラック企業の実情を、ブラック企業の社長のインタビューをもとに紹介してくれる。

このページでは、本書の内容とその感想を紹介していく。

大手転職・就職サイトの求人情報に平気でウソを書く企業がある


たとえば給料や勤務地、福利厚生、休日休暇など、転職・就職で会社を選ぶとき転職サイトや就職ナビサイトなどの勤務条件を参考にするし、求人情報に書いてある勤務条件がまさかウソだとは思わない。

「月収30万円、残業手当あり」と書いてあれば、基本給30万に残業代が追加されると思っている。

しかし『求人詐欺 内定後の落とし穴』によると、求人票に、当たり前のようにウソを記載する企業が存在するというのだ。

契約書には「休憩1時間」と明記されていたが、実際にはなかった。施設内での各職員の1日の動きを書いた「業務遂行表」には「休憩時間 30 分」としか書かれていない。そもそも、法律が定める1時間の休憩が予定されていないのだ。

実際には、この30分の休憩時間すらとれなかった。休憩とされた時間は、施設外に出ることは許されず、職員が休憩をとる部屋にはパソコンが設置してあり、事務作業を行わなくてはならなかった。もちろん、賃金計算上は1時間の休憩をとっていることになっている。

求人詐欺 内定後の落とし穴

これは誰もがしる大手転職サイトに掲載されていた企業に入社した人の体験談だそうだ。

上記の例以外にも、

  • 営業手当や残業手当などの名目で残業代を支払わない
  • 「入社半年後に正社員登用」と記載してありながら、実際は正社員登用がない
  • 「裁量労働制」と記載しておきながら、出社時間が決まっていてさらに裁量労働制の名目で残業代が払われない

といったウソの求人情報を記載している企業がたくさんあるというのだ。

求人詐欺の被害にあわないためには、なんといっても求人情報を鵜吞みにしないこと大切という。

とくに「みなし残業」「裁量労働制」「固定残業代」などのキーワードがある求人は、残業代をごまかそうとしている可能性が高いので、応募するなら面接や契約書で残業についてしっかり確認しておく必要があるという。

また万一、騙されても対処できるように、契約書のコピーを取っておいたり、口頭で勤務条件を言い渡された場合はそれを録音しておくことで、労働契約書の勤務条件と実際の勤務条件が違っていた場合、未払い残業代や未払い賃金を取り返せると、本書では解説しています。

退職できないように脅すブラック企業もある

基本的に会社を辞めるのは従業員の自由であり、会社が無理やり引き留めることはできない。従業員は奴隷ではないので、業務規程と労働基準法に従っている限り、社員は自由に会社を辞めることができる。

それにもかかわらずブラック企業で働く続ける人たちが存在する。「ブラック企業なら辞めればいい、辞めるのは自由なんだから」と思ってしまうこともある。むしろブラック企業と分かっているのに辞めない社員がいるからブラック企業がなくならないのではないかと。

しかし実は、ブラック企業を辞められないのは、ある事情がある。それがブラック企業による洗脳だ。

「入社前は、面接時などでは本人の話に合わせて愛想よく振る舞う。で、入社したら、態度を豹変させる。一言も口を利かないとかね。これで新人はまず私のことを怖いと思う。ここが大事だね」

<中略>

「新人が就業時間中に少しでも手持ち無沙汰にしていたら、その場でどやしあげる。そして、言う。『お前、会社にどれだけ貢献してるんだよ』と。これで新人は、まず俺の言うことには絶対服従する」

ブラック企業経営者の本音 (扶桑社新書)

入社前は優しく接し、入社したら急に高圧的に接することで社長に絶対服従するように洗脳するというのだ。

先輩社員も同じように洗脳されており、先輩に不平不満を言っても「余計なことは考えるな」と返されるだけだという。

ブラック企業のなかには、仕事を詰め込むことでプライベートの時間を奪い、余計なことを考えられないようにしている企業もある。

「下手に、外の話を聞きつけて、労基なんかにタレこまれてもかなわない。だからウチは〝仕事のための仕事〟をとにかく増やしている。」とも。

実際ブラック企業の勤務する多くの人が、忙しくて転職活動する時間や外部の情報を入手する時間がない。ブラック企業は、精神も時間も拘束することで、会社に縛り付けるのである。あまり巧妙だ。この労力を事業の成長のために使ってはどうかと思ってしまう。

ブラック企業・求人詐欺は国がしっかり取り締まるべき

ウソの求人で人を集める企業が平然と存在しているのは正直驚きだ。

求人票の内容と契約書の内容がちがったり、契約書の内容と、実際の労働条件が違ったりしており、明らかな契約違反をしているわけだ。そんな企業が平然と存続しているのだから、この国の労働市場は無法地帯なのかと思ってしまう。

真面目なホワイト企業が割を食う

またブラック企業がウソの条件で人を集めてしまうことは、まじめに人材募集を行うホワイト企業にとっても損だ。

ブラック企業は「月給30万」
ホワイト企業は「月給25万」

ブラック企業であることを知らなければ当然、月給が高い方に求職者は応募する。

ウソの求人を掲載するブラック企業がのさばっているおかげで、偽りのない求人を掲載し、まじめに人材募集をするホワイト企業が割を食うのだ。

自己責任では片づけられない

おそらくアメリカだったら、労働条件と違ったらすぐ辞める、もしくは弁護士にでも相談して訴えるのだろう。

しかしアメリカの自己責任論が日本で通用するわけではない。

「嫌なら辞めればいい」「訴えればいい」「確認しなかった本人が悪い」といった自己責任論で片づく問題ではない。

労働市場においては、求職者は不利になりやすい。採用してくれる企業がなければ、悪い条件で自分を売らざるを得なくなるし、万一のとき、企業と法廷で争うにしても資金面、ノウハウ面で労働者は不利だ。

労働者が身一つで、ブラック企業と戦うには限界がある。だからこそ国によるルール作りが大切なのだ。

本書でも解説されているが、問題は国の取り締まりがあまり機能していないことだ。

労働側に不利がある以上、情報公開を徹底するように、そして虚偽があった場合には罰せられるように、厳しい規制が求められる。

今日の日本型の就職・転職システムの機能不全を認め、新たなルールを策定することが、切実に求められている。

求人詐欺 内定後の落とし穴

現状、求人掲載には一定のルールがあるが、すべての求人を国が一つ一つチェックしているわけではないし、一つ一つチェックするのは現実的ではない。

ならば求人掲載のルールを厳格にして、ルールに従わない企業は求人を掲載できない、罰せられるといったようにすることがまずは大切だ、と「求人詐欺」でも紹介されている。

労働者から搾取する形で利益を増やすようなブラック企業がはびこっていては、いつまでたっても日本の労働生産性は低いままだろう。

搾取される人が増えれば使うお金も減って、日本の景気はどんどん下降していくばかりだ。

国が制度を厳格にして、労働者から搾取できないようにすることが大切だ。

それで存続できない企業は潰れればいい。

労働者から搾取しないと生き残れないような企業は、そもそも大した価値を世の中に生み出してないだろうから、遅かれ早かれAI化の波で消えるだろう。

そして多くの企業がイノベーションによって利益をあげること目指すようになれば、人口が減り高齢化が進む日本も、まだまだ成長しているのではないだろうか。

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